のこされる家族のことを思い遺言書を書いてみよう。そう思われたあなた。
“この財産をこうのこせば、きっと幸せに暮らしていってくれるに違いない”
そう願って、あなたは財産をどうのこすか決めたとします。
ところが、遺言書を作ろうか、というときに、あなたの手ははたと止まりました。
財産の分け方は決まっているのに、それをどう遺言書にかけばよいのか分からなかったのです。
遺言書をどう書けばよいかわからない。
そんなお悩み
いまの時代、書き方を説明しているサイトはいくらでもあります。
たとえば「遺言書 書き方」といった言葉で検索してみれば、いくつもの
実際にインターネットでえた情報をもとに、形式的には法律上問題がない遺言書を作成される方もおられます。
でも、その遺言書は大丈夫、間違いないという自信を
インターネットで得られた情報は古いこともありますし、信頼できないものもあります。
こういった情報をもとに作成された遺言書が有効なものとして扱われるかどうかは、ご本人が亡くなった後でなければ分かりません。
信頼できるサイトや書籍の情報で、形式的に法律上問題がなく有効な遺言書が作成できた、とします。
でも実は、あなた亡き後、ご家族が幸せに過ごしました、となる保証はありません。
どうしてかと申しますと、たとえ形式的に法律上問題がなくても、ご家族を争族に変えてしまうトリガーが含まれているおそれがあるからです。
具体的には、遺言の仕方によって、あるいは、相続人間への配慮が不足していることが、そのトリガーとなります。
同様のことが、公証人という、いわば法律の専門家が介在して作成される公正証書遺言でもおこりえます。
公正証書遺言は、公証人が介在するので形式的な不備の生じることが、ほぼありません。
しかし、形式的に不備のない公正証書遺言が作成できたとしても、遺言の仕方や、ご家族への配慮が不足していれば、やはりご家族を争族に変えてしまうおそれがあるのです。
ご家族を争族に変えてしまうおそれをなくすためには、相続人どうしの関係性や、遺留分、それまで行ってきた贈与や寄与などをケースバイケースで検討しなければなりません。
のこされたご家族が幸せに過ごせるように、そんな思いが逆効果に
遺言書の作成を検討しよう、そう思われた方は例外なく、のこされたご家族が幸せに過ごしてほしい、という思いを抱かれています。
しかし、そんな思いを託したはずの遺言書が、逆に互いに争う火種となってしまうこともある、としたらどうお感じになるでしょうか。
たとえば、下のような遺言書があったとします。
| 遺言書 |
| 遺言者甲野春子は、本遺言書により次のとおり遺言する。 第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、長女甲野夏子(昭和〇〇年〇月〇日生)と、次女乙田秋生(昭和〇年〇月〇日生)に、各二分の一の割合で相続させる。 (1)土地 所在 〇〇県〇〇市〇〇町一丁目 地番 23番地 地目 宅地 地積 100平方メートル (2)建物 所在 〇〇県〇〇市〇〇町一丁目 家屋番号 〇番〇 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階25.00平方メートル、2階20.00平方メートル 第〇条 次の財産は、前記甲野夏子に相続させる。 (1)A銀行 東支店 普通預金 口座番号 0000001 第3条 次の財産は、前記乙田秋生に相続させる。 (1)B銀行 西支店 普通預金 口座番号 0000002 |
| 令和○年○月○日 〇〇県〇〇市○○一丁目23番地 遺言者 甲野春子 ㊞ |
上の遺言書の内容は、遺言者(甲野春子さん)が、ふたりの娘さまにご自身の財産を均等に譲る(「各1/2ずつ譲る」という文言がありますね)というものです。
春子さんの亡くなられたとき、主な財産は不動産のみで預金はわずかでした。
そのため、春子さんはふたりの娘さまが自分の死後も仲良く過ごしてほしいという思いを込めて、財産をちょうど半分に分けるこの遺言書を作成されたようです。
具体的には自分の死後、夏子さんおひとりでは住むには家が広すぎるだろうから、家を売ってできたお金を半分にわければおふたりのために良いだろう、と考えておられました。

この遺言書は、法律のルールに則って作成されているので形式上の不備はありません。
しかし、春子さんの思いとは裏腹にこの遺言がもとで、ふたりの娘さまの関係はぎすぎすしたものとなってしまったのです。
どうしてでしょうか?
長女の夏子さんは、お年を召した春子さんと同居し、長年、お世話をしてきました。
対照的に、次女の秋生さんは結婚し家をでたことを理由に、春子さんのもとに頻繁に訪れるということはなかったようです。
春子さんののこした遺言書に対し、長女である夏子さん、次女の秋生さんの言い分はこんな感じでした。

秋生は、お母さんの介護を私に丸投げ。
それなのに、どうして秋生と私の分が相続する分が同じなの?

私には私の家庭があるから、お母さんをみたくてもみれなかっただけ。
子どものために本当は家を売ってお金に換えたいけれど、それを我慢して家を売らないであげているのは夏子姉さんが困ってしまうから。
どうして夏子姉さんは分かってくれないのかしら…。
年老いたご両親のためにされた介護に、どれだけの財産をもって宛がえばよいのか、そもそもお金という価値に換算できるのか、というのは難しい問題です。
だからといって、自身の介護がなんら評価されないとなれば、介護をした者に不公平感が募ってしまいます。
春子さんは、夏子さんの介護に対し感謝の気持ちを遺言としてのこすべきでした。
ただ土地と家のほかに目立った財産がないため、介護の分として夏子さんに多めに財産をのこすことは難しいところではあります。
この遺言には、もうひとつ将来問題になりそうな点があります。
それは、家と土地を半分ずつ分けるよう指示している点です。
春子さんには、姉妹が財産を仲良く半分ずつ分けて争わなくて済むようにというお気持ちがあったのかもしれません。
しかし、秋生さんにはご家族があります。
この家と土地が夏子さんと秋生さんの共有状態のまま、もし夏子さんより早く秋生さんが亡くなってしまうと、夏子さんは家と土地を秋生さんの旦那さん、お子さまと共有する状態となってしまうでしょう。
兄弟姉妹が亡くなられても、その配偶者、お子さま(姪、甥)との関係性を生前と同じように維持できるものでしょうか。
関係性の維持が難しいのではないか、疎遠になるのではないか。
そう思われるのであれば、共有という状態をつくる割合による遺産の分割は避けるべきでした。
このように、遺言が法律で定められたルールに則って作成されたとしても、争族となるおそれは回避されません。
たとえ公正証書遺言として作成された遺言でも、争族となるおそれが
《たくす行政書士事務所》では、ご家族を争族に変えてしまうおそれのない遺言書の起案、ご自身の作成された遺言書を拝読し、思いが伝えられるような遺言書の提案をいたします。
